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空腹時に胃もたれ?
胃痛は食後に起きることが多いですが、空腹時にも生じることがあります。空腹時の胃痛のメカニズムと、空腹時の胃痛の改善すべき生活習慣などを知っておくと、効果的に症状を改善することができます。
空腹時だけ胃がもたれる原因
空腹時に胃がキリキリと痛むのは、過剰に分泌された胃酸が胃そのものを刺激してしまう胃酸過多の状態である可能性が考えられます。強酸である胃酸が胃の炎症を引き起こすことで、痛みが生じるようになります。
正常な胃は、口から摂取した食べ物を消化して腸へ送り出したり、体内に侵入してきた菌を除去する役割を担っています。これらを行うために、胃の粘膜からは強い酸性の胃酸とタンパク質を分解するペプシンなどを含んだ胃液が分泌されています。また、胃酸が胃そのものを損傷しないように、胃粘膜から分泌される胃粘液によって、胃を守っています。
胃が正常な状態では、これら胃液と胃粘液の分泌のバランスが保たれているため、胃そのものが障害を起こすことはありませんが、胃酸が過剰分泌するなど何らかの原因でこのバランスが崩れると、胃に炎症が起こり、胃痛を引き起こします。
胃酸が増える原因
ピロリ菌保菌者の減少
ピロリ菌とは、胃酸を分泌する細胞を破壊して胃の粘膜に慢性的な炎症を起こす細菌です。ピロリ菌に感染すると、慢性胃炎や胃潰瘍、胃がんを引き起こすようになります。
現在、日本でピロリ菌の感染者は40歳以上が大半を占めています。ピロリ菌の感染率は下水道の普及率と相関しているため、以前に比べて衛生環境が整った社会で育った若い世代では、ピロリ菌の感染率は減少傾向にあります。
一方で、ピロリ菌に感染していない胃は、年をとっても胃酸の分泌量が低下しないため、結果的に胃酸過多による胃もたれや胃炎を発症しやすくなります。
食の欧米化
胃酸過多を引き起こすもう一つの原因は、食の欧米化です。脂分の高い欧米型の食事は消化に時間がかかるため、それに伴って胃酸の分泌量も増加します。若いうちから高脂肪の食品を多く取る食生活を続けていると、胃酸が多く出やすい体質に変化していきます。
また、脂分の多い食事を毎日多く取り続けていると、消化管ホルモンのはたらきによって胃と食道のつなぎ目である噴門を閉める下部食道括約筋という筋肉が徐々に緩んでいき、噴門が開きやすくなります。その結果、胃酸が胃の内容物が食道に逆流する逆流性食道炎を引き起こし、胃痛や胸焼けなどの原因となります。
空腹時に胃もたれが起きる病気
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流することで、食道に炎症が起こる疾患です。主な症状は、胸焼けや胸の痛み、喉や口まで酸っぱいものがこみあげてくる呑酸、喉が焼けるような感覚などが挙げられます。また、逆流性食道炎は空腹時や夜間などに起こりやすい傾向があり、咳や不眠など様々な症状を引き起こすこともあります。
十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍とは、胃酸による刺激に胃粘膜が耐えられなくなり、十二指腸の粘膜がただれたり剥がれ落ちる疾患です。主な原因は、ストレスや食生活の乱れ、喫煙、ピロリ菌の長期感染などが挙げられます。症状は、上腹部の持続的な痛みや胸焼け、腹部の膨張感などが、空腹時や早朝に発生する特徴があります。20~40代の男性に多く見られる疾患で、治療ではピロリ菌除菌の薬物治療が中心になります。
慢性胃炎(ピロリ菌胃炎)
慢性胃炎は、主にピロリ菌の感染によって起こる疾患です。発症すると、胃粘膜の炎症が長期間にわたって繰り返し生じるようになります。主な症状は、胃の不快感や胃もたれ、食後の腹痛、食欲不振、吐き気などが挙げられます。また、無症状であっても、ピロリ菌を除菌しない限り菌が胃の中に滞在し続けるため、徐々に胃を損傷していきます。その他、ピロリ菌による慢性胃炎は、治療せずに放置すると胃潰瘍や胃がんを引き起こす恐れもあるため、注意が必要です。
胃潰瘍
胃潰瘍とは、胃酸によって胃の粘膜がただれて損傷する疾患です。主な症状は、胃痛や胃のむかつき、腹痛、吐き気などで、重症化すると潰瘍から出血や穿孔を起こすようになります。
胃潰瘍は、食後に痛みが生じることが多い特徴があります。また、胃潰瘍の原因の7~9割はピロリ菌が関与しているという報告もあります。
主な治療は薬物治療が基本ですが、重症の場合は外科手術が適用されます。また、喫煙も胃酸の分泌を促進するため、喫煙者の胃潰瘍罹患者は非喫煙者の約3倍という報告もあります。
胃がん
胃がんは胃粘膜内の細胞ががん化することで発症し、主な原因はピロリ菌による胃壁の細胞の遺伝子損傷となります。進行すると、胃粘膜だけでなく胃壁やその外側にある周辺の臓器にまで拡大いくこともあります。また、自覚症状に乏しく、早い時期から転移しやすい特徴もあります。
近年は、食生活の改善意識の向上や集団検診の普及によって早期発見・治療が進み、死亡率は少しずつ減少傾向にあります。ピロリ菌が大きな発生要因であることも判明しているため、ピロリ菌保菌者は積極的に除菌治療を受けることが、胃がんの予防に繋がります。
十二指腸がん
十二指腸がんは、胃と小腸をつなぐ消化管である十二指腸に発症するがんです。腫瘍が小さい初期の段階では、自覚症状はほとんどありません。進行すると食べたものが通りにくくなり、腹痛や腹部膨満感、嘔吐などの症状が現れます。また、食べたものが通る時に腫瘍と擦れて出血を起こし、気づかないうちに少しずつ貧血が進行していることもあります。その他では、十二指腸がんが胆汁の流れを塞いでしまうと、黄疸を引き起こすこともあります。
空腹時に胃もたれがする方の改善策
ストレスをためない
過度なストレスの蓄積は自律神経のバランスを乱し、胃酸の分泌を促進して胃を守る胃粘液を減少させます。胃液と胃粘液のバランスが崩れることで、胃痛や胃もたれを引き起こします。胃が不調になると、満足に食事ができないことでさらにストレスが蓄積し、症状が悪化するという悪循環に陥ります。したがって、胃もたれの予防には、しっかり休息や睡眠をとり、趣味などリラックスする時間を確保して、上手にストレスを発散することが大切です。
脂っこい食事を避ける
高脂肪の食事は消化しにくく時間がかかるため、多くの胃酸が分泌されます。食べたものが胃の中に長時間留まるため、胃もたれや胃痛を起こしやすくなります。
胃に負担がかかる脂分の多い食事は避け、消化の良いものを食べることが、胃もたれ予防に繋がります。
食事は腹八分目を心がける
過食は胃痛や胃もたれを引き起こします。多くの量を食べるほど消化の時間も長くかかり、胃酸も多く分泌されます。普段食べ過ぎている自覚がある場合は、腹八分目を意識するようにすると、胃痛や胃もたれ予防に繋がります。
アルコール、カフェイン、味が濃いものを控える
コーヒーや紅茶、緑茶などカフェインが多い飲み物やアルコールは、胃を刺激して胃酸の分泌を促進します。したがって、カフェインを多く含有するドリンクや過度な飲酒は避けるよう心がけましょう。また、香辛料などの刺激が強い食べ物や味が濃い食事も、胃の炎症を悪化させる恐れがあるため、控えるようにしましょう。
早食いをしない
食事をよく噛まずに早食いすると、消化に時間がかかり胃酸が多く分泌されます。食事の際には、ゆっくりよく噛んで食べるようにし、胃の負担を減らすよう心がけましょう。また、ゆっくり食べることで満腹中枢を刺激し、過食を防ぐこともできます。
監修:横浜わたなべ内科・内視鏡クリニック 鶴見院 院長 石部 敦士