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大腸がんは遺伝する?
大腸がんの多くは大腸ポリープが進展することで発症しますが、中にはrリンチ症候群や家族性大腸腺腫症(家族性大腸ポリポーシス)(Familial adenomatous polyposis;FAP)という遺伝性疾患の場合もあります。これらは、大腸がん全体のそれぞれ2~5%、1%未満と、ごく少数の疾患です。
これら2疾患を含め大腸がんの5%は遺伝性大腸癌であり、大腸がんのうち30%は遺伝的因子が関与して発症するという報告もあります。したがって、大腸がんは生活習慣の見直しだけでなく、家族歴も重要になります。
リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん;HNPCC)とは
リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん;HNPCC)とは、一般的な大腸がんの発症年齢よりも若年時(50歳未満)で大腸がんが発症した場合に多く見られる遺伝性の大腸がんです。1966年にLynch(米国クレイトン大学医学部教授)らによって報告されたことから、リンチ症候群とも呼ばれています。全大腸がんの2~4%と、比較的稀な大腸がんです。
症状は右側結腸から始まり、一般の大腸がんよりも低分化腺がんの頻度が高い傾向があります。また、大腸がん以外にも子宮がんや卵巣がん、胃がん、小腸がん、胆道がん、膵がん、腎盂・尿細管がん、脳腫瘍、皮膚腫瘍などの悪性腫瘍を併発するため、それぞれのがんに適した治療を行う必要があります。
リンチ症候群は、常染色体優性の遺伝的素因によって発症する大腸がんです。リンチ症候群では、ミスマッチ修復遺伝子の異常によっておこるマイクロサテライト不安定性という現象が高頻度で見られます。
以下が遺伝性非ポリポーシスの主な特徴となります。
- 家系にがん罹患者が多い(大腸がん、子宮がん(子宮体がん・子宮内膜癌)、胃がん)
- 若年時にがんができる
- 同じ人に何度も(あるいは何個も)がんができる
リンチ症候群の特徴
若年時に大腸がんを発症することが多い
大腸がんは、一般的に30、40歳代かそれ以上の年齢で発生する場合が多いですが、リンチ症候群の大腸がんの場合には、20歳代やまれに10歳代で発生することもあります。
がんが複数できる場合
大腸がんは、同時に複数できることもあれば、一度治っても新たなに大腸の別の場所に発生することもあります。
その他にも、大腸がんとともに胃がんや子宮がんなど、複数の臓器に同時にがんができることもあります。
大腸ができる場所
一般の大腸がん場合は、右側約3割・左側約7割の割合で発生しますが、リンチ症候群の場合は、右側約5割・左側約5割となります。
マイクロサテライト不安定性(MSI)とは
マイクロサテライト不安定性(MSI)とは、DNAが複製の際に生じる塩基配列の間違いを修復する機能が低下することにより、腫瘍組織においてマイクロサテライト反復配列が非腫瘍(正常)組織と異なる反復回数を示す現象です。
マイクロサテライト不安定性(MSI)は、リンチ症候群以外の大腸がんでも10~20%程度は起きますが、リンチ症候群(HNPCC)の場合では80~90%と高頻度になります。
切除が不要とされる大腸ポリープ
大腸がんの予防には、大腸ポリープを切除することが効果的です。大腸のポリープには以下のような種類があり、切除が必要なものは主に①②③になります。右側結腸(盲腸・上甲結腸・横行結腸)では多くの粘液を産生しており、ここで生まれたポリープが大きくなるとがん化する可能性があるため、これらの特徴を有する③過形成性ポリープも切除しておいた方が良いとされます。ただし、S状結腸や直腸に過形成性ポリープが多発した場合は、多くを切除しなくても良いケースもあります。
- がん
- 腺腫
- 過形成性ポリープ
- 若年性ポリープ
- 炎症性ポリープ
その他④⑤のポリープは、切除をしてもがんの予防効果はないため、不要となります。
リンチ症候群で大腸がん以外に注意すべきがんとは?
大腸以外にも、胃や十二指腸、乳頭部、甲状腺(女性)、肝臓(小児)などの部位には良性・悪性の腫瘍ができやすい傾向があります。
具体的な例としては、胃の上側に多くできる良性腫瘍の胃底腺ポリポーシスや、十二指腸がんの原因になる十二指腸ポリポーシス、乳頭にできて良性・悪性双方の可能性がある十二指腸乳頭部腫瘍、若い女性に多い甲状腺乳頭がん、小児がんの一種である肝芽腫、腹壁や腹部の中にできる良性腫瘍のデスモイド腫瘍などが、大腸以外に注意すべき腫瘍となります。
大腸がんに関するページ
監修:横浜わたなべ内科・内視鏡クリニック 鶴見院 院長 石部 敦士